ブログを通して生まれた学び合い -K大学の学生さん・先生とともに

facebookでもつながっている,O先生は,こちら栃木でも小学校での外国語活動を指導されていた経験をお持ちの方です。

 

現在は,K大学で,学生さんたちに,外国語活動指導指導法という授業を通して,彼らとともに学び合っておられます。

 

拙ブログの,11月13日付の投稿

「国語と英語」 - 子どもの発話と教師の発話と

http://takaenglishteacher.hatenablog.com/entry/2013/11/13/045440

 

を読んでくださって,その内容を学生さんとともにシェアしたい,との連絡をくださいました。

 

拙い内容でもかまわない,とおっしゃっていただいたので,どうぞお使いください,と返信を差し上げたところ,ブログの内容を学生さんにプリントして配布してくださり,ディスカッションをしてくださいました。

 

授業後,学生さんたちが書いたコメントがすぐに送られてきました。

 

ブログを通して生まれたつながりに感動するとともに,真摯なコメントをくださった一人一人に,すぐに返信を書きました。

 

O先生,学生さんの承諾が得られたので,そのやりとりを以下に掲載したいと思います。

 

学生のみなさん,よかったら,ぜひコメントをお願いしますね!

 

O先生,本当にありがとうございました。

 

これからもどうぞご指導,よろしくお願いいたします。

 

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Aさん(4)

Q:中学の実習に行ったとき、私は中1を担当しました。指導教諭の方に「小学校と違って中学じゃ日本語訳を教えてくれるんだ。安心した」と生徒が言っていたと聞きました。だから、英語に親しむのはいいけれど、きちんと内容を理解しない子どもは不安なんだなと思いました。また、たくさん触れさせて鳴らす方法もあるけれどなれるほどの量に子どもたちは触れていないのかとも思いました。そこのあたりに課題があるのでしょうか。

 

A:「慣れさせる」ことをどのようにするか、が大切だと考えています。文脈から切り離されて、形式だけに重きを置いたドリル練習が多く行われる傾向がありますが、そうなってしまうと、練習していることをどんな場面で、どんな意味で使うかが見えてこないと考えます。練習したけど、とっさに使えない・・・ということが起こらないようにするためにも、文脈の中で使われる表現に、まずはたくさん触れさせる、そして、段階的に(インタラクションに巻き込んで)使わせる・・・というステップが必要ではないでしょうか。

 

 

Bさん(3年)

Q:英語の授業ではどんどん話すことを重視すべきだと私も考えています。私がアメリカに住んでいるとき、周りがネイティブだらけにも関わらず、コミュニケーションがとれたのは、きれいな英語が話せなくても単語とジェスチャーだけで伝えることができたからです。ですが、これは一方的に話すだけではだめで、周りの人たちの話を聞く姿勢が必要です、クラスの環境作りも大事なのだと思いました。

 

A:「聞く」ことは非常に大切です。教室内のsecurityが低いと、騒がしくなったり、発言者に注意を払わなくなったり、やじを言ったりして、安心して英語を使えなくなります。ただでさえ間違うのが恥ずかしい外国語なのですから。また、聞き手に自分の話が届いて、理解されているかも大切です。相手によってことばを選ぶことにもなりますし、話題も選ぶことになります。 

 

教師がたくさんインプットをして児童・生徒に聞かせたつもりでも、彼らが興味関心を抱いて真剣に聞いていなければ、インプットの体をなしません。

 

 

C君(3年)

Q:楽しい授業であることが大切なことだと改めて思った。

どの程度文法にかかわるものを混ぜていいのか、どの程度の単語であればあつかっていいのか、少しずつ分かってきた気がします。小学校の外国語活動は、英語で日常会話をすること、できることが最終目標ではないので、まちがっている英語でも「英語を使う、使おうとする」ことが大切なのかなと思った。

 

 

A:「楽しい」も、いろいろありますね。知的好奇心が刺激される楽しさも大切です。相手に興味がわいて、もっと知りたい、とか、自分のことを伝えたい、わかってほしい、と思う楽しさも大切ですね。

 

「定着」や「アウトプット」も求められる中学校では、修正は必要だと思います。しかし、Cさんが言っているように、修正がaffectiveに働くこともあるので、対話の流れが妨げられないように、上手に言い換えてあげる(reformulation/recast)ような対応が必要ですね。また、oralな場面ではゆるく、writingさせたものには、内容に向けたコメントとともに、修正をしっかりとしていくような二段構えを私は取っています。(生徒にも4月のガイダンスでそうすることを伝えています)

 

 

Dさん(3年)

Q:この考えにとても共感する。東京外大の友人がスペインに留学していて、ハーフのため英語はペラペラで、父親がフランス語の大学教授のため、フランス語も話せる友人は言語能力はとても高いはずなのだけれど、自分の考えがどうしても表に出せず、もどかしさで苦しんでいる。そんな話を聞いた時に感じたことと、今回のブログを読んで感じたことが似たようなものだった。これを乗り越えたら、楽しくコミュニケーションをとれるのだろうけれど、もどかしさと上手に付き合っていく方法はないのだろうかと思った。

 

A:そんなときのために、私は英語便りで心構えについて伝えたり、言語はどのように習得されるのかを伝えたりしています。また、言いたいことの7割が表現できれば最高!とも伝えています。あとは、自分の表現が少しずつでも伸びていることを実感させるようにしています。賞賛もたくさんします。それが彼らを支えると思っています。

 

 

Q:Eさん(3)

日本語であれば表現できるのに、英語では語彙が足りなくてなかなかもどかしい気持ちになるという気持ちは自分自身もよくわかります。どうやって言えばいいのかわからず、つい、日本語が出てきてしまいます。日本語ならばわかるから。私は中高で美術部でしたが、表現したいものはなかなか形にはなりません。わかっていても描けなくなり、ひたすら形を練習しました。表現する原理は一緒だと思いました。

 

子どもたちにわかりやすい言葉でイメージをどこまで膨らませていくかがポイントになると思います。子供は必死になって頭の中で膨らませてくれます。だからこそ、こちらの言葉の使い方や使う言葉をしっかりと限定していくことが求められると思いました。

 

A:もどかしさはどうしても起こる、のは避けようがありません。しかし、そのもどかしさを児童・生徒が抱えている、ということに教師が共感的な理解をしているだけでも、対応がずいぶん変わってくると思います。教科書の基本文レベルでも、豊かな表現を実現している作文にも出会います。Writingをさせたら、私はよくできたものを増し刷りして全員に配布し、読ませるようにしています。感心が次の作文をよくする原動力になると思っています。

 

 

Fさん(3年)

Q:言いたいことがあるのに、英語で話すことができないことは子供たちにとってもどかしくてイライラしてしまうと思います。外国語活動では正しい英語を話させることを主眼としていないと思うので、まずは単語だけでも相手に伝わっているよと思わせることが大切だと思います。身近くても自分のわかる範囲でしゃべってみる姿勢を教室内で育てるのが教師の役割だと感じます。修正の仕方やタイミングが難しいと思います。

 

A:伝わった、ということが喜びになります。 だからこそ、パートナーを変えながら、難易度を変えながら、話題を少しずつ変えながら、何度も対話をする機会を設けます。 部活動やピアノなどと一緒で、どれだけ英語に触れ、どれだけ英語を使ったか、そして、使いっぱなしで終わらずに、自分を振り返ることの繰り返しが大切だと思っています。

 

 

Gさん(3年)

Q:国語と英語の能力は差があって仕方ないと私は思います。生まれてから親に愛情を注いでもらうときも初めて友達と会話をしたりするときも日本語を使っているため、国語が小学生の時点で豊かなのは当たり前です。また、日本語は一つの表現をするのにいろいろな表現があります。英語ももちろんこれから世界へ発信するのに日本語のように思ったことがペラペラ話せたほうがよいとは思いますが、同じようには話せないと思います。それより英語に対して、臆病にならないことが大切だと思いました。

 

A:そのとおりですね。教師になると、自分の専科しか授業を担当しません(中学校)から、改めて久々に国語の授業を見ると(そういう機会がない人もたくさんいます)、びっくりしてしまうのです。

 

同じおもしろい、でも、生徒たちはinteresting/funなどしか使えませんが、対象とするものがなんなのか、によって、辞書を引かせます。 このケースで本当にinterestingなの?と問いかけると、彼らは、exciting/amusingなどの語彙を自分で見つけてきます。その繰り返し(新出単語だから、ではなく、必要感があるから)が大切だと思っています。

 

 

Hさん(3年)

Q:言いたいことがたくさんあるのに英語で表現できないという感覚はすごくわかる。英語に触れる機会が少ないので活用することができない。そもそも単語を知らない。表現方法がわからない。普段の生活での活動と英語活動の差が大きすぎると考えると、低中学年から英語に触れることはいいことなのかなと思った。

 

A:そのとおりです。だからこそ、授業の冒頭には、毎時間、洋楽・NHK基礎英語を取り入れ、inputをできるだけ与えるようにしています。家庭でも触れるように推奨しています。

 

教科書を学習するときにも、まずは閉本させた状態で、リスニングポイントを2つ与え、その答えを見出す目的で音のみで教科書の音声を聞かせています。

 

 

Iさん(3年)

Q:母語での認知が高くて英語運用能力が低い以上、ギャップがあるので「話したいことが話せない」というもどかしさ、そして簡単な英語でしか話せないことへの恥ずかしさを感じてしまうと思う。簡単な英語でしか話せなくてもコミュニケーションをとることはできるのでカッコ悪くないと伝え、「単語だけでもいいんだ」と感じさせることが大切だと思う。

 

A:教師の姿勢がまさにそれ、です。自分がどじったり、自分の情報を遠慮せずに開示したりします。Self disclosureはとても大切ですね。テストの採点も、「表現」の観点は、できるだけマイナスが内容に加点法で採点します。

 

 

Jくん(3年)

Q:高学年の英語ではある程度の理解度があるので、同じ活動でもテーマを換えたり工夫をすることはやはり必要であるなと感じました。そして、母語での認知が高く、その分英語運用能力が低いとやはり、意識しなくても母語が前面に出ていたり、もどかしさから少し毛嫌いしてしまう傾向もあるのかなと思い、大変だなと感じました。

 

小学校と中学校の英語教育においての価値観については小学校はとにかく話す楽しむというところに焦点を置いているので、とにかく英語を使う努力を大事にしたいなと思いました。

 

 

A:考えさせる内容が高度なら、英語で行う活動のレベルを下げる、 逆に、

考えさせる内容が簡単なら、英語で行う活動のレベルを上げる、 という関係性があると思います。

 

また、教師の扱う英語については、形式だけではなく、どんな音色で、どんな表情で、どんなボリュームで伝えるか、なども大切だと思っていて、小学校の先生、幼稚園の先生の言葉づかい(日本語)は、本当に参考になります。

 

 

Kくん(3年)

Q:国語能力が低いために英語も話せるのにちんぷんかんぷんのことしか言えない事例(これは私がその前に話した、イギリス在住の8歳くらいの日本人が英検2級面接を受けに来て、英語はペラペラだけれど、認知的に幼くて質問の内容が理解できず、頓珍漢な答えをしていたというエピソードです)の応用例を書いていたと思います。国語では要点を言わせることを目的とし、英語はたくさんぺらぺら話さなければいけないという考えはまったくの同意です。しかしながら、これは両方の言語能力が低いからであり、向上すれば逆もあり得るかもしれません。ただ、(英語の授業で)日本語をたくさん話すのは変ですが…。子供が話す言葉は教育が何とかしなければなりません。これから二つの言葉を話すことが必須になるなかで、何を求めるのか、考えるといいかもしれない。

 

A:教師が使う言語が日本語なのか、英語なのか、は、量だけでなく、質も大切だと思います。なぜその場面で日本語を使うのか(文法について扱う場面だったり、答え合わせだったり、来週のテストについてのガイダンスで全員に必ず周知したい場合だったり)、なぜ英語なのか、を、教師がしっかりと考え、ねらい合致しているかが大切だと思います。

 

ただ、英語に触れる量ができるだけ多い方が望ましいので、そこを忘れてはなりませんが。

 

 

L(3)

Q:「小学校では語の間違いにこだわらずとにかく話させる」「中学校では語の間違いは指摘しつつたくさん話させる」に徹する。このことに何か問題があるのかな?と思いました。「言いたいことはあるが英語がわからなくて言えない」子供をどう発言させるのかは小中によってやり方は違いつつも(どちらも難しいことだろうが)たくさんのやり方をそれぞれの先生が考えなくてはいけないことだと思いました(全く同一のケースはないので)

 

 

A:小学校外国語活動については、多くの研究者の考え方が混とんとしており、どうすればよい、という方向性が一枚岩になっているとは言い難い状況があります。ただ、学習指導要領が言っていることを考えると、小学校ではとにかく話させる、ことをねらっていません。

 

できるだけたくさんの、豊かなインプットに触れさせつつ、言語感覚を養ったり、言語や文化に関する興味・関心を持ってもらったりすることが大切です。 思わず反応してしまったアウトプットが出るといいな、という感じです。

 

 

Mさん(2年)

Q:国語と英語の授業についてはとても興味深かったです。小学生が英語を話せず、日本語を話してしまうのはとても自然なことで自分の気持ちを伝えるということを単純にしているだけだと思います。Kくんだけでなく、私もカナダに行ったときに英語ではすべての気持ちを伝えることができず、困ったときは日本人を頼ってしまっていました。日本人の中では仕事で英語を使わずに生きていける人がたくさんいます。小学生に英語を教えることで大事なのは英語に興味を持たせることと外人さんと簡単なコミュニケーションを取れたり、外国の文化に興味を持たせたりすることだと思いました

 

A:Mさんの考え方は、上で私が回答したことに近いですね。 自分で実体験を持っていると、教壇に立って指導するときに、とても役に立ちますね。 そうしたエピソードを聞くことを、児童・生徒は大好きです。

 

 

Nさん(2年)

Q:O先生も言っていたように、母語としての言語力と英語の言語力の差をどうするかは難しい問題だと思いました。Takaさんの言うように、「簡単な英語にシフトダウンして英語化していくこと」は先生からしたらやりやすいというかわからせたように感じるけれど子どもが本当に理解をし、納得し、より意欲的にすることには結びつかないように思いました。

 

 

A:そういう考え方もあると思います。

一方、たとえば、言いたいことをそのまま難しいレベルのまま、辞書から引いた単語をちりばめて英作文したとします。

 

それを読む相手が同級生だった場合、その英作文の意味が理解されず、結局一番したかった、相手に伝えたい、わかってほしい、という思いがかなわないことになります。

 

「対人意識」(相手を意識する)ことはとても大切で、そうしたことを抱き合わせて、相手によって最適なレベルで英語をアウトプットすることが大切だね、と体験を通して徐々に理解させるようにしています。Nさんの言っているようなことが実現できたら、私もぜひやってみたいのですが・・・。

 

 

Oさん(2年)

Q:私も自分の言いたいことを英語にできないもどかしさを抱えています。気づいたら日本語になっていたりと英語に苦手意識を持っていました。しかし、小学生だからこそ間違えてもいいからどんどん発言できた面もありました。自分が将来英語を教えることになった時、子どもの言いたいことを英語で言えるように変換してあげることはとても難しいことだと思いました。

 

A:これも、未習の内容を伝えて、彼らがいっぱいいっぱいになってしまっては大変ですね。だからこそ、彼らが言いたいことの要点を一緒に確認しながら、やさしい表現でも伝えられるように、一緒にプロセスを進めていくようにしています。 その瞬間にライヴで対話しているときに、相手の発話を受け止め、言い換えて返すのは熟達した教師でないとなかなかできないかもしれませんね。

 

 

P君(2年)

Q:児童の要求を満たすためには難しい文法を教えていかなければならない。でもそれだと理解できないジレンマを解決するのはやはり難しいと感じました。

 

A:これは永遠のテーマですね。上でいろいろと書いてきたことが、自分なりの答えかな、と思っています。近視眼的にすぐできるようにさせたい、と思うことから脱出して、中長期的に、ゴールに向かって子どもを見ていくと、小さな進歩にも気が付くようになれると思います。

 

 

Q君(3年)

Q:母語の能力と英語の能力のジレンマが学習意欲につながるのではないかと思った。伝えたい、ことばにしたいという気持ちを持ち続けさせることがより大切なのではないかと思う。

 

A:こんな簡単な文でも、(自分の思い100%ではないにしても)伝わった!ということを体験させたいと思っています。教科書の基本文レベルのものを活用しつつ、それができる子供たちを育てたいです。それができたら、ちょっと上のレベルを!に挑戦させていきたいですね。

 

多読や多聴をさせながら、ああ、こんな言い方があったのか!という発見をさせることも大切にしています。言葉の習得にはそもそも時間がかかります。 語彙がたくさんあったからと言って、では、自分の思いが100%伝わるかどうかは確かではありません。 相手がnativeだったら、常識や感覚が違いますし、同じblueでも、同じ色を想起しているかどうかは分かりませんね。100%ではないかもしれない、という感覚は永久なもので、避けがたいですよね。 だからこそ、交渉したり、確認したりするstrategyも大切になるのではないでしょうか。