1年間,どのように授業を創ってきたか 

これまでの本校のコミュニケーション活動は,Aさん,Bさん,二人の対話のダイアログのフレームがプリントに印刷され,それをもとにして,いくつかのオリジナル文を加える形で進められてきました。

   

英語が苦手な生徒でも比較的取り組みやすいため,よいところもあるのですが,私が感じたのは,対話をしている相手を見ないままの活動になっている,ということでした。

  

自分の言いたいことを自分の言葉をひねり出して,相手の顔を見ながら対話をさせたい・・・

  

対話をしながら話題を膨らませ,対話を楽しむ生徒の姿を見たい・・・

  

と考えてきました。

   

昨年度から地元の大学院に進学し,2年目に現場に戻りながら修士論文を執筆したわけですが,復帰にあたり,ワークシートを使わずに,1年間かけてじっくりと上記のような生徒を育てようと考えました。

  

具体的な手立てとしては,

  

・先生がよいモデルを示す

 

 ・先生が生徒とインタラクションをしながら,対話の在り方を示す,生徒にも体感させる

 

 ・生徒相互の対話の機会を日々継続的に設ける

  

こととしました。

  

実際には,授業の主活動としてのコミュニケーション活動の際にこうしたことを行わせますが,帯活動として,短い時間でも継続的に取り組ませようと思いました。

  

第二言語習得研究の視点から授業作りを見直しました。

  

できるだけたくさんのインプットを与えるようにしました。これまでもずっとしてきましたが,理解可能なインプットになるように,これまで以上に工夫をしました。

  

アウトプットをさせることは,自分が学生の立場に立ってみて,想像上に苦しいものだと分かりましたので,話させる,書かせるまでに,ステップを刻んだ指導をすることや,誤りを無くすことにあまりにも執着すると,伝えたい,知りたい意欲が萎えてしまうので,まずは流ちょう性,そして量を大切にし,次第に正確性につながるようにしてきました。

  

インプット,アウトプットの間をつなぐために,これまで以上にインタラクションを大切にしました。指名された生徒以外は聞き手になりますが,聞き手が傾聴し,聞き手の学びの機会となるように,トピック選択や,場面の工夫,教師がファシリテータになって,インタラクションを広げたり,深めたりするように心がけました。インタラクションでの教師と生徒との対話が,その後の生徒相互の対話のモデルになるようにも今まで以上に工夫をしました。

  

教科書の指導でも,学習者の立場に立って改善を図りました。まずは聞く,ということで,ピクチャーカードを使わずに,リスニングのポイントを2つほど示して,モデル音声を聞かせます。教科書は閉本したままです。

  

その後,ピクチャーカードを使ってイントロを行います。そこでも教科書は閉本したままです。ここまででざっくりと本文の内容を捉えさせ,T-Fで理解度を確認します。

  

次の段階で初めて教科書を開かせ,再度音声を聞かせます。文字と音声が一致するように,複数回聞かせます。

  

新出単語の練習を経て,内容理解に入ります。全訳はせず,ポイントになる部分を,生徒の気づきを引き出すようにしながらチェックしていきます。

  

ノートにポイントを整理したら,そこから音読に進みます。内容理解をしていないものを読ませない,というスタンスです。

  

また,生徒が授業を楽しみにできるように,帯学習を構成しました。

  

・洋楽

  -これまでもずっと使ってきましたが,短期間で何かを身につけさせるためにではなく,漢方薬のように,じわじわと耳慣れしたり,発音が改善されたりすることを意識しました。重たく使わずに,楽しく,を目指しています。また,できるだけBGMを大きくしたり,プロジェクタを使って部屋を暗くしたりするなど,人目を気にする中学生でも,遠慮せずに声を出せる環境を作っています。

  

・NHK基礎英語

  -筑波中などでは,もっとがっちり使っています。筑波中では,毎時間ではなく,これは,というものを適宜取り入れて,文字を見せたり,音読させたりして活用しています。一方,今年の私の実践では,多聴,というスタンスで考えているので,どんな状況なのか,また,聞き取るべきポイントは何かを最初に確認して,耳だけで聞かせています。

  

Please tell me.

  -ペアによる対話活動です。生徒の生活に関連したトピックになるように工夫をしています。また,少し前に学んだ言語材料を繰り返し使える場にしています。まずは教師が話題提供をし,トピックを生徒と共有するようにしています。文脈がある中での対話にさせたいからです。そして次に,教師がモデルを示します。その際,教師がただ自分のペースで一方的に話すのではなく,適宜間をとって,生徒がリアクションをしたり,教師に質問をしたりできる工夫をしています。その後,実際にパートナーと対話をさせ,その後,教師が何人かの生徒に質問をし,ペアでの対話で話したことを教室全体で共有するようにしています。

  

院に行ってみると,たくさんのことに気づきます。 本を読み,授業を受け,周囲と話し,たくさんの授業を参観すると,これまでの授業の粗にたくさん気づいてしまい,やりたいことだらけになってしまいます。

  

不器用な自分ではすべてをこなすことができないので,とにかくぶれずに,これらのことを1年間通すことにしました。ある時期にはこれ,次の時期にはこれ,と組み合わせることまで欲張らないことにしました。

  

子どもたちのリスニングの能力や,対話の力は,短期間では身につくはずがなく,1年間やってみて,ようやく成果が形になって表れてくるので,上の活動の成否も,1年間かけて検証しなければ分からないと思ったからです。

  

また,短期決戦で子どもたちの習熟や定着を考えると,こちらもいらいらしたり,苦しくなったりして,生徒を責めてしまいます。彼らも苦しいと思ったのです。

  

自分が授業から離れて,改めて感じ,考えたことは,定着のための練習があまりにも重視され,実際に,生徒が伝えたい,聞きたいと思えるような活動が組まれてきたか,ということでした。

  

言語材料の形式にあまりにも比重がかかり,意味や機能にはあまり重きが置かれない,または,ドリル練習が徹底して行われ,実際の意味でコミュニケーションがなされない,と言う授業です。

  

部活動で言えば,体力トレーニングや基礎技術のドリル練習は徹底して行うが,練習の中にゲーム形式の練習,実践形式の練習が乏しい,そして,練習試合を組まずに,いきなり公式戦に・・・というようなイメージです。

 

試合をするからこそ,基礎・基本の大切さに気づきます。

  

年間計画にも,開隆堂のサンシャインを使っていることもあり,学期末,学年末のプロジェクト活動を位置づけ,それに向かって授業を組んでいます。

  

リハーサルになるような活動を,日々の授業に位置づけ,ゴールにたどり着けるか,彼らに,自分の学習状況を振り返る場面を与えてきました。

 

授業では,子どもたちは盛んに対話活動を行っています。 でも,それは以上のような考えに基づいています。

 

最初は少ない量,誤りがあるものが,だんだんと量が増え,形式にも少しずつ意識が高まって正確性も担保されるようになってきました。

  

話させるだけで大丈夫か,という問いに対しての自分の答えは,次のようなことです。

 

話させるときには,話したい,聞きたい,という思いを第一にするため,コミュニケーションの流れを切らないようにする

  

話したいコンテンツにめいっぱいの生徒には,エラー修正をしても,十分伝わらない

 

話したことをノートに書き起こさせ,レポートをさせるときに,ようやく生徒は自分がアウトプットしたものの中身だけでなく,誤りにも気づけることになる(できる子は話したときにも気づくが・・・)

 

話したことはそのまま消えてしまうが,ノートに文字化されると,可視化され,メタ化が促進される

  

ということで,毎回書かせたものを週に一度回収し,ペンを丁寧に入れ続け,正確性を高める努力をしてきました。

 

1年通して続けてきたことで,流ちょう性,正確性が徐々に高まってきたと思います。

  

また,テストの作問,評価でも,授業と連動していくようにしました。 英作文などは,流ちょう性,内容が理解できるかが半分,正確性が半分,と,1文ごとに2点を与える英作文を行わせ,指定された分量以上に書いている場合は,加点法で,点数を与えるようにしています。

 

語いも,対話のような流れの中で空所補充をさせるようにしています。 こうしたことを一体化させて授業を進めています。

 

 

いかがですか。

 

もしよかったら感想や気づきなど,教えてくださいね。