英語授業研究学会 関東支部 秋季大会へ向けて

英語授業研究学会(英授研)WEBSITE

 

11月16日に開かれる,英語授業研究学会の関東支部,秋季大会で中学校の授業提供をさせていただくことになりました。

 

ずいぶん先のように感じられますが,授業分析をお願いする先生に十分な時間を取っていただくためには,早めに授業の映像を送る必要がありますね。

 

できるだけ直近のものを,と考えると,10月に撮影,がベストだと思いましたが,10月は

 

3日に文化祭

 

25日に運動会

 

となり,落ち着いて授業をするのが難しいと考えました。

 

となると,9月・・・なのですが,9月は1日から22日まで教育自習が入ってきます。

 

教育実習が終わるとすぐに文化祭,そして合唱コンクールへ向けて,となってしまう・・・

 

そう考えて,夏休み明け,最初の授業(教育実習生に子どもたちの様子を見てもらうために公開)を撮影しようと考えました。

 

冒険の要素が大きいと思いましたが,夏休み前までやっていたことが,どれだけ身になっているか,が分かる,ある意味貴重な機会と考えました。

 

長くなりますが,授業分析者の先生に送った「私のこれまで」と「授業構想」について紹介します。

 

 

11月16日,少し先ですが,よかったらスケジュールを調整していただき,参加してもらいたい・・・と思います。

 

会場で会いましょう!

 

*****

 

【私のこれまでと,本時について】

 

初任校 指導困難校で問題行動のある生徒たちと格闘した4年間

2校目 大きな問題行動はなく,田舎と都会が混在する環境で,伸び伸びした子どもたちに囲まれた3年間

3校目 マニラ日本人学校で,現地校やインター校との交流学習など,現地ならではの学びに挑戦した3年間

4校目 街中にある学校で,学習能力の高い子どもたちが多い環境で過ごした4年間

5校目 再度指導困難校でトラブルに見舞われながら子どもたちとの関係作りに励んだ2年間

6校目 現任校で6年目

 

現在教職21年目,42歳です。

 

 

20代は部活動指導に明け暮れ,年間で3~5日程度の休日でバレーボール,バスケットボールの指導に当たっていました。

 

マニラに行って,休日の大切さ,自分の中でのオンとオフの時間の大切さに気づき,同時に,家庭を大事にすることの大切さについても考え直すきっかけを得たと思っています。

 

帰国後,自分の子どもが保育園や小学校に通い始め,先生からかけられる声や,保護者対応の様子から,自分のこれまでの言動について省みる機会が多くなると同時に,教科指導の研鑚に励むようになりました。

 

真剣に教科指導の改善に取り組み始めたのは35歳でした。その頃,英授研に入りました。

 

指導困難校だった前任校時代,太田洋先生に見ていただいた授業ビデオのコメントは,「Tさん,Tさんは動物のトレーナーみたいだよ。」でした。

 

子どもたちの学力を自分の見立てのみで低く見積もって,定着を強く意識しすぎて反復練習ばかりに取り組んだ授業をしていました。

 

自分の考えや気持ちを,自分のことばで表現することのできる子どもたちを育てたい・・・そう願って授業改善をしようと決めたとき,たまたま現任の中学校へ異動する話が舞い込んできました。

 

インタラクションを中心とした授業をずっと展開してきた現任校では,2人の同僚にも恵まれ,インタラクションについて学ぶ機会が数多く持てました。身近に指導力のある同僚がいることは,本当に財産です。

 

一方で,伝統的にリニューアルを重ねながら改善し,蓄積してきた豊富なコミュニケーションワークシートを使った授業のメリットとデメリットを感じていました。

 

身近なトピックを設定し,ペアでの対話を難易度の低いものから高いものへと効果的に配置したワークシートは見事で,フォーマットを活用しながら,+1.+2のオリジナル表現を加えていきながら対話を発展させていくことが自然にできるようになっていました。

 

このワークシートを使うことで,ほとんどの生徒が対話をすること,そして継続することができるようになっていく一方,相手があって対話をしているにも関わらず,生徒の視線は常にワークシートに注がれ,心をつなぎあって対話を紡いでいく,また,視線を交わし,顔を突き合わせて対話を楽しむ,そうしたことができていないことにも気づいていました。

 

ワークシートから離れたい,気持ちと気持ちをつなげあって,視線を交わしながら,会話を楽しむ生徒を育てたい,既習の言語材料や語彙,技能を活用しながら対話を継続する生徒を育てたい,そう強く感じたのでした。

英授研に入ったころから,様々な本を読むようになり,また,できる限り多くの授業を参観したり,ビデオで試聴したりするようになりました。

 

また,自分の授業ビデオをさまざまな先生方に見ていただき,批評をしていただくようにもなりました。

 

本の中では,現場の先生が書かれた本も多く読みましたが,第二言語習得研究の本には特に興味が惹かれ,自分の授業の意味を,その観点から見つめ直すことにも努めました。

 

参観する授業や,自分の周囲にいる先生方の授業を見ると,やはり,自分同様,定着を強く意識した授業が数多く行われていました。

 

自分の中にわき起こってくる疑問は,そうしたやり方で学んでいた生徒が,先々,自分の言葉を紡いでコミュニケーションできるようになるのか,ということでした。

 

実際に,自分が教えている生徒は,決まった対話のフォーマットをなぞることはできても,即興で自分のことばで語り合う段階になると,途端に言葉に詰まってしまうばかりでした。

 

そんなとき出会ったのが,姫路の稲岡章代先生の授業でした。

 

英授研で見た授業に強い共感を抱き,深い印象を受けましたが,そのときは,授業のエッセンスが何なのか,おぼろげなことしか見えないような気がしていました。

 

 

平成21年度から勤務する現任校では,インタラクションを自在に操る2人の同僚と学び合う機会に恵まれています。相互に授業を参観し合う中で,子どもたちが自分の考えや気持ち,事物の描写などを,自分で選んだ言葉を使って表現できるような授業づくりのポイントに徐々に気づいていったように思います。

 

●まずは,1年後,3年後にどんな生徒を育てたいのか,ビジョンをもつこと

●そこにたどり着くまでの道のりをバックワードデザインで考えること

●習熟や定着を焦らず,形を変えて繰り返しながら,生徒がtryし,failしても,再度tryができるような授業展開をすること

●中長期的にも,短期的にも,育てたい生徒の姿をゴールとしてイメージするとともに,1時間の中でも同様にその時間の最後にどんなことができるようになっていればよいかのイメージをもって授業を行うこと

●ガイダンスと,自分たちのパフォーマンスを振り返る機会を設定し,リフレクションを充実させること

 

 

●生徒が興味・関心をもち,知的に刺激を受けるような状況(コンテクスト)づくり

●活動が,必要感・必然性・自由度・自己関連性を持っていて,生徒の心を動かすこと

●豊富なインプットを与え,自分たちのアウトプットのモデルとなること

●説明ではなく,インタラクションに巻き込み,実際にやってみせる(DO like this!)こと

●対話のフレームを与えるワークシートから離れること(ワークシートに目を落としたまま型どおり話す)

●英語に十分触れ,英語を十分使う時間を確保すること

 

●Try it, Fail it, Try it again, Fail it better.が実感できる授業を創ること

 

 

こんなことを考えるようになりました。現場に戻る直前,大学院1年目の最後,2月に,念願だった稲岡先生の授業を参観する機会が得られまして,実際に子どもたちと授業を行っておられる姿を間近に観察できました。

 

稲岡先生には,授業参観後,ディスカッションの時間を取っていただいた他,改めて時間を取っていただき,お茶を飲みながらたくさん話をさせていただくことができました。英授研でビデオ視聴をしたときには分からなかった稲岡先生の授業のポイントが,実際に授業を参観し,その後稲岡先生本人とディスカッションする機会をいただいたことではっきりとしてきたと実感しました。

 

上記の●に加え,

 

●しっかりとしたモデルが示されている

●失敗が許されているが,最後までやりとげることを目指している

●生徒の気づきを引き出す機会が設けられている

●パートナーを変えながら,対話を繰り返すことができる

●関連を保ちながら,少しずつ変わっていくトピックをもとに,繰り返し対話をすることができる

●オーラルでは流暢性を,そして,話したことを書き起こすライティングとノート指導の丁寧さで正確性を育て,バランスを取っている

 

のようなことが大切であると感じました。

 

 

現場復帰した平成25年度からは,勤務校の伝統であるワークシートによるコミュニケーション活動から離れ,ワークシートを使わず,自分の言葉をひねり出し,自分の考えや気持ち,事物の描写などを行いながら,対話を継続できる生徒の育成を目指して授業を行っています。

 

現任校では1年生を担当したことがなく,2年生の4月から入った学年で,現在もちあがりで3年生を教えています。

 

 

教科書は,開隆堂のSunshineを使用しています。

 

学期末,学年末のプロジェクト学習が位置付けられており,それを自校化しアレンジしながら活用しています。

 

各学年末には,ファイナルスピーチを位置付けています。Preparedなものの集大成として位置付け,日々の授業でそこに向かっていることを実感させる指導をしています。

 

各学期末には,対話テストを位置付け,impromptuなものの伸びを継続的に見取れる機会を設定しています。

 

今回の授業は,双方につながるものになるよう,対話をした内容を最後に書き起こしていくような流れになっています。

 

 

9月1日の始業式後,1時間は夏休みの課題を回収したり,今後に向けてのガイダンスを行ったりしました。

9月3日の2学期2時間目の授業が本時です。

 

9月1日から教育実習生が着任しており,3時間目からは彼らに授業をしてもらうので,そのためにモデルとなる授業を各クラス1時間ずつ見せた,という授業でもあります。

 

夏休み明け,英語を使っての普段の授業は初回,ということで,夏休みのブランクでどれだけ英語が使えるのか,という不安は大きくありましたが,反対に,これまで1年間+1学期,彼らと一緒に学び合い,積み上げてきたものがどれだけなのか,ピュアに分かるはずだ,むしろ,そこに意味がある,と思いました。

 

授業は,日頃行っている授業の流れ(稲岡先生の授業を参考に自分としてアレンジ)そのものです。

指導案は書いていなかったので,概略を記します。

 

●言語材料  call 人・物 + 呼び方

 

 ※ callを導入した初回の授業です。

 ※ 単元の指導計画は,新出言語材料の導入と,それを使ったコミュニケーション活動で1時間,その後,言語材料が含まれる教科書本文の内容理解をする1時間の計2時間で,教科書1セクション分を扱う構成を基本にしています。

   まずは使ってみる,体感的につかんでみる1時間,そして,つかんだものを知識として整理しつつ(復習),それが含まれる教科書本文を理解する流れになります。

 

 

●本時の目標

 

 ① call 人・物 + 呼び方,を含む英文を用いて,自分の好きな先生など,人物がどう呼ばれているかについてペアで対話をしようとする(コミュニケーションへの関心・意欲・態度)

 

 ② call 人・物 + 呼び方,を含む英文を用いて,自分の好きな先生など,人物がどう呼ばれているか,相手に伝えることができる(外国語表現の能力)

 

 

●展開

 ① あいさつ・洋楽を歌う

 ※ 洋楽は毎時間歌っています。今回は教育実習生にバトンタッチする前の1時間しかないので,以前使った歌を再度使用しました。

 

 

 ② 言語材料の導入

    Teacher talkを行い,言語材料を含む英語を聞かせる(内容の類推・ポイントの類推)

 

 ③ インタラクション

    Teacher talkの流れの中で,生徒を巻き込みながらインタラクションをし,言語材料を自然と使わせる

 

 ④ ポイントの確認

    体感的に感じ取らせたことから,call A + Bの意味・用法(・形式)についてノートにまとめる時間を作

    る

 

 ⑤ ペアでの対話

 ※ パートナーを変えて繰り返す

 ※ 話題を変えて繰り返す

 

 ⑥ 対話した内容をデモンストレーション コミュニケーションの流れを分断しないようにして,

 ※ 他のモデルに,どこがよかったのかをシェアリングする

 ※ その後パートナーを変えて繰り返す

 

 ⑦ 対話した内容をもとにレポートとしての英文を書く

 

★授業では対話で流暢性を,ノートチェックで正確性を

 

※ ノートは1週間に1度提出します。そこには細かいことも含めてチェックをし,コメントを書いて返却します。