秋田県湯沢市の中学校訪問 -O先生の授業を参観してきました②
タクシーが中学校の玄関に到着すると,O先生は私の到着を待っていてくださいました。
一緒に顔を見せてくださった教頭先生や,その後通された校長室でお話させていただいた校長先生,みなさん温かで,たくさんの学校を訪問させていただいていますが,こんなに歓迎していただいたのは初めてかもしれません。
1時間目が終わった後で職員のみなさんが集まってくださいました。職員室でまずは挨拶させていただきました。これも初めての経験でした。
訪問させていただいた中学校は,各学年1学級の小さな学校です。英語科の先生もO先生一人,そんな環境の中で,2時間目の3年生の授業,そして3時間目の1年生の授業を見せていただきました。
O先生曰く,私が来るからといって特別な準備はなくて,普段着の授業だから,と伝えてもらっていました。まさにその通り,子どもたちは背伸びをすることもなく,ありのままの姿を見せてくれました。
結論から言って,秋田まで行ってよかった,久しぶりに感動した,という気持ちでいっぱいになりました。
O先生のかかわりが本当に温かく,子どもたちは安心してゆったり学んでいます。勝つ活動に与えられる時間は十分で,焦ることなく学んでいます。でも,授業が楽しくて,気が付くとあっという間に終わっている,というような,よい授業を見させていた時に共通に感じる,あの不思議な感覚を味わうことができました。
本当にすばらしかったです!
ここから,よかった! 学ばせていただいた,と思えたことを紹介していきたいと思います。
【3年生の授業】
3年生では,マイクロディベートに挑戦していました。
与えられたお題は:
Which is better to live in, Okinawa or Akita?
でした。
O先生曰く,どこまでできるかは分からないけど,これまでやってきたことがどこまで出てくるか,だね,と事前にお話されていた授業でした。
O先生は,宇都宮から来た私をクラスの子どもたちに紹介してくれながら,私に問いかけました。
Mr. T, you live in Utsunomiya, right? Is Utsunomiya a good place to live?
私の存在をうまく活用しながらその後の活動への橋渡しをされました。
その後,今日のお題として上の問いを示し,子どもたちを2つのグループに分けて教室の両サイドに分けて座らせ,マッピングシートを配布しました。
沖縄サイド,秋田サイドに分かれて,それぞれの生徒たちが,まず与えられた場所についてのよいところをマップ上にどんどん書き出していきます。
書いている中身を見てみると,それぞれの生徒らしさがにじみます。
I can play baseball in Okinawa all year.
I can swim in Okinawa all year.
と書いている坊主頭の男の子,
Taco rice
Soki soba
と書いていた男の子,
なんで沖縄なの?と話しかけると,修学旅行で訪問したことや,民泊だったことなどを教えてくれました。そこで出してもらった食事を書きだしたそうです。
O先生が,子どもたちの中に情報があることをちゃんと考えて使っていたことが分かった瞬間でした。
秋田サイドに目を移すと,沖縄に負けたくないという思いでがんばっていました。地元のよさをおまつり,名産品,秋田ならではの自然など,身近なことを表現していました。
準備時間は十分に与えられ,子どもたちも安心して学んでいます。困ったことがあると,先生がサポートに廻りますが,その前に,隣の生徒と自然に助け合っていました。
それぞれのサイドに3分ずつ与えられた発表時間になると,子どもたちは盛んに挙手をして発言します。
その中で,
I think Akita is better than Okinawa to live.
という文が自然に出てきました。前時のトレーニングもあったでしょう。でも,それ以上に普段から人前で発表する経験をたくさん積んでいるからこそ,自信を持って発信できていることがにじんでいました。
発話の中でエラーがあると,O先生が自然に修正フィードバックを与えていました。適切な言い方を発話の後に重ねています。ここも,おお!と思った場面でした。
ALTの先生もいたT-Tの授業でしたが,先ほど紹介した写真のように両サイドに分けてメモをしてくれます。
こうして両サイドの意見が出された後で,3分間の準備時間が与えられます。相手のデメリットを突くための準備をする時間です。
攻守交代で逆の順番からスタートしました。
ここでも,
I disagree with No. 4.
などと言いながらたくさんの意見が出されました。写真の中で黄色で示されている部分です。
間違いを恐れることなく,積極的にどんどん発言をしていく生徒たち。笑顔を絶やさず取り組み,助け合う姿,そしてそれを温かく受け止め,かつ,必要な指導の手だてを講じていくO先生,すっかり引き込まれている自分がいました。
ジャッジの段階で,
①全員が発表したかどうか
②参加態度
というボーナス要素が加算されました。
実は,この中学校では,数学と英語がティームティーチングになっています。他教科の先生が参加をしているのですが,3年生の授業には社会担当の教頭先生が入っておられます。
態度点は,「傾聴」を中心としてその先生が判定を客観的な目で行いました。子どもたちの納得が得られます。また,全員参加ポイントを考慮することで,どの子も仲間のためにがんばろう,というゆるやかなしばりがあり,彼らの動機づけになっていました。
出てきた意見,相手の長所を消した反論,それらを考えながら点数をカウントしていくと,なんと1点差の僅差で沖縄チームが勝利しました。
教室は嬉しさと悔しさが交錯して・・・
最後に今日の振り返りをカードに書かせて,授業が終わりました。
圧巻の授業でした。
子どもたちは人懐っこくて,がんばりを讃えて声をかけると嬉しそうにお礼を言ってくれました。
前日夜の食事の際,O先生は,50分の中で,本時のねらいをしっかりと達成することの大切さを述べておられました。
最後の振り返りまでしっかりやらせたい・・・
このところの私は,単元内の時間をフレキシブルに使う,ということを考えていて,50分の枠にとらわれないことを考えていたので,改めて1単位時間をしっかりとデザインすることの大切さを思い知らされました。
また,これまで学習してきたことをしっかりと活用する場面を設定することの意義を再確認しました。
すばらしかったです!
その③に続く・・・