第2言語習得と母語習得から「言葉の学び」を考える

 

第2言語習得と母語習得から「言葉の学び」を考える (アルク選書)

第2言語習得と母語習得から「言葉の学び」を考える (アルク選書)

 

 

上智大学の和泉伸一先生による近刊です。

 

さっそくクリックして購入しましたが,今回は出張で電車に乗る,という機会を有効に活用できたので,じっくり読むことができました。

 

カバーに書かれているのは,

 

「外国語学習に関するあやふやな俗説が溢れる中,何が学習者に対しての正しい期待であり,何が理不尽な要求なのか,またどうしたら生徒の力を最大限に伸ばせるのかを見極めることが重要である。こうした疑問を的確な背景と知恵を提供してくれるのが,データに基づいて言葉の学びを探求する「言語習得研究」である。」

 

ということでした。

 

伝統的に行われている学校での英語授業,言い換えれば,教師が学生時代に受けてきた授業を再生産的に行うこと,について,自分たち教師はあまり省みることなく行っているという状況は,けっこうたくさん存在しているような気がします。

 

どうでしょうか。

 

本書では,母語習得と第二言語習得について比較したり,第二言語習得研究の中で分かってきていることを提示したりしながら,学習者を学びの中心に置いて,いったいどんな指導を展開していけばよいのか,私たち教師に再考するチャンスを与えてくれます。

 

第二言語習得について提唱されている考え方を網羅的に示した上で,それぞれのよさや,貢献点を紹介しつつ,反対に課題や問題となる点も伝えてくれています。

 

未だこれだ,という100点満点の指導方法は見いだされていないので,私たち教師は,目の前にしている子どもたちを中心に置きながら,さまざまな指導方法を組み合わせながら授業を展開していく必要があります。

 

簡単に言えば,今行っていることを自分自身が常に批判的に見直し,更新していくことが大切になりますね。

 

 

そのためにも,教師自身がこうして読書をしたり,研究会に出て,自己更新をし,学び続けることが大事だと思います。

 

 

特に印象に残ったのは:

 

言語習得における「U字型発達曲線」についてです。

 

子ども(学習者)が誤りを犯すのをマイナスと捉えず,成長の過程で必要なものだと認識すること。また,学習者の発話を分析していくと,まず模倣を通して得たことばをかたまりとして使い,誤りがあまりないという段階から始まり,次に,自分なりに見いだしたルールを適応しながら創造的にことばを使う段階へと進みます。その際,誤りがたくさん起こります。この段階で誤りを犯すことは,学習者が後退したのではなく,自分で創造的にことばを使おうとして起こるもので,前進していることだと考えます。

そして,誤りを克服しながら,再び正確に発話をするようになっていくのです。

 

このことを考えると,授業で生徒が誤りを犯したときに,それをどう捉え,受け止めるか,改めて考え直したくなります。

 

テストやノート点検,英作文の添削についても同様ですね。

 

みなさんはどう感じますか?

 

 

また,もう一つは,U字型発達曲線の第二段階(中間言語を産出している段階)にいる生徒たちに対して,どんな授業を行うか,どんなテストを行い,評価するか,ということも大事になる,ということです。

 

行動主義的に考えることをあまりさせないまま記号のように言葉を使わせるだけ,テストも覚えた知識量を問うものだとすると,いったいどんな英語力が育ち,いったいどんな人が育っていくのでしょう。

 

 

改めて考えたくなります。

 

 

研修会などで,スキル獲得を主眼にしたミクロな指導技術を教える,また,そうした授業をよしとする,という風潮があるような気がします。

 

生徒は学びの主体です。

 

私たちがマネジメントする相手,対象ではないのです。

 

 

そんなことを改めて感じさせてくれた,本当によい本でした。

 

 

ぜひ手にとって読んでくださいね!