広がり続ける学びの輪 - 新潟のM先生からのメール

f:id:takaenglishteacher:20140427101407j:plain プランターにどんぐりくん出現

 

プランターにぽろりとどんぐりを散らしておいたら,いつの間にか根が出て,木になって・・・

 

今回で3シーズン目でしょうか。かわいい小楢の葉っぱですね。

 

さて,いつも交流をしている新潟の高校の先生であるMさんから,嬉しいメールが届きました。

 

2月に撮影した自分の授業DVDを,御自分で視聴されただけでなく,教え子でもあり,同僚として働いている若手の教師とシェアしてくださったとのことでした。

 

ありがたい・・・

 

学びの輪が広がりますね。

 

研修会でテクニックの共有をするのとは違い,授業の根底に流れるコンセプトを理解し,マクロな視点から学ぶ・・・

 

そこから,自分が目の前にしている生徒の学びに還元するためのミクロを考えていく・・・

 

地道でも,1人1人,1つ1つの授業が動いていくことの意味・意義を噛みしめています。

 

M先生から送られてきたメールを,了解を得て紹介したいと思います。

 

みなさんなら,1つの授業DVDを視聴して,どんなことを感じられると思いますか?

 

ここから紹介されるコメントを読むと,正直本当にびっくりしますよ。

 

ここまで深く洞察し,深く咀嚼し,丹念に言葉を選んで表現できるんですね・・・。

 

M先生は,私のELEC研修を受けてくださって,私の考えていることを理解してくださいました。

 

また,これまでお互いの授業DVDを何度も送り合って学び合ってきました。

 

さまざまな研修会・研究会に参加をされて学んでいることだけで終わらず,そこから先,自分の中でしっかりと咀嚼し,自分の目の前の生徒たちに照らして吟味しているからこそ,ここまでのことが考えられるのですね。

 

目先のことについつい追われがちなことを,私自身も多いに反省しました。

 

みなさんも,ぜひこの後の振り返りから気づいたり,学んだりしてほしいです。

 

 

*****

 

 

T先生、おはようございます。

年度末にうっかり引いた風邪は、3週間尾を引きました。

ようやく、今になって、DVDを視聴させていただくことができました。
失礼をお許しください。


視聴させていただいて、感動しました!


本当にありがとうございました。


授業の合間に勉強していたら、「よかったら勉強させてもらいますか?」と,通りすがった若手のホープが興味を示したので、

先生は、どんな授業を目指し、どんな点に留意しておられるのでしょうか? 後で感想をお聞きしますね。」と、先生には無断で申し訳なかったのですが、信頼できる人なので、お貸ししました。


なんと、すぐに視聴され、今朝、部活動で出勤すると、机上に、しっかりレポートが置かれていました。


プリントアウトされたものなので、
今、打たせていただきます。

・・・


T先生の授業DVDを見せていただきました。

印象的だったのは、次の場面です。

○生徒がよく顔を上げている
○生徒の表情がよい(生き生きしている)
○教師と生徒、生徒同士の視線がよく合っていて一体感と安心感がある
○教師と生徒、生徒と生徒がよく言葉を交わしている
○生徒が考えながら言葉(英語)を使っている

まずは英語を使って見せて、考えさせて、使わせる。山本五十六の言葉を思い出しました。

やってみて、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。

話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。

ありがとうございました。

・・・・

N先生とおっしゃる、本校3年目のホープ、
実は十数年前に私の勤務していた学校の生徒でした。
年齢は、30代半ば、今は、ご縁があり、同じ2学年を一緒に担当しています。

私が自分の感想をまとめる前だったので、「やられたなあ~」と思いました。

このように、ちゃんと、学んだことを「結晶化」できるとは、今後も楽しみです。

いつか、先生とお会いする機会もあるのではないかと思います。
私ともども、ご指導よろしくお願い致します。


ううう・・・ 嬉しい・・・

 

N先生,いつかぜひお会いして,お話しましょう! 

 

そして,M先生のコメントです。

 

 

【先生ご自身の変容】


より「のびやかに」余裕を持って授業をしておられるなあ、と感じました。先生が、自然体で、教室の中で、生徒の中に溶け込んでいる。「勉強するぞっ!」と固く固まった空間ではなく、集まった仲の良い人たちで語り合っているのかな、と思わせるような、なんとも心地よい空気を感じました。

それは、
問いかけたときに、期待する答えが凝り固まっていないからだろうと思います。
judgementalな雰囲気がなく、生徒からかえってきた答えや言葉に、柔らかく対応し、
つまり、何がきても受けとめて切り返せる、という自信に裏打ちされた、落ち着きと空気感なんだろうと思いました。


【生徒の動き】


そんな空気の中で、生徒の「発話意欲」が途切れることなく、ずっと語り合いを継続できていることが、驚きでした。

それは、先生のMC力のなせる業ですね。

一本調子で進めていくのではなく、じゃれあいのような時間があったり、敢えて生徒につっこませて、先生の素の姿を惜しむことなくさらけだしたり、逆に先生がつっこんで、生徒の持ち味を引き出したり、仲の良いアニキと弟妹のほのぼの時間のような時間の創出。

指名にも意図と理由があるんだな、というのは、生徒の「おおっ」という歓声でわかりました。

T先生は、僕たちのことをあたたかく見てくれているぞ、という信頼感を感じ取りました。

できそうでできないことです。
よくある公開授業では、最初のうちはよいものの、だんだん、だれてきたり、しらけてきたり、というパタンも見られます。

私自身、しょっちゅうそんな授業をして、自己嫌悪です。常日頃の人間関係の構築に尽きますね。


くつろいでいるけれど、しかし、それでいて、確実に授業なのであって、

今は、「モデルを示している」時間だな、

今は、「モデルを基にして自分で試行錯誤する」時間だな、

今は、「把握したパタンに習熟するべく、繰り返しを重ねているプロセス」だな、

と、しっかりphaseの役割の変化もみてとれるものでした。

A→A’→A”→B・・・、という変化ですね。

この2年間高校3年生を担当しており、仕上げ仕事が多かったので、基礎作り段階や実力伸長期で大切なことを、あらためて確認させていただく時間となりました。


【授業のイメージを一言で言うと】


頭に浮かんだのは、ハンバーグです。

つまり、捏ねてるなあ、という感想です。

捏ねる前には、攪拌、という作業もされたと思います。

「どっちが好き?」というおしゃべりを、トピックを変えて、何度も繰り返されました。

生徒同士がおしゃべりをする前には、先生と生徒のおしゃべりが繰り返されました。

何度も、何度も、丁寧に・・・

これが、やはり、仕込みの段階では大切なのですね。

smoothでnaturalでauthenticなinteractionを、大学院派遣を経て、完成されましたね。
私も同じ方向を指向していますので、これからもしっかり意識していきたいと思います。

最後は、言えるようになったことを書いて見て精度を上げていく、という丁寧な見取りシステム。

稲岡先生も必ずされるそうですが、T先生も、そのことを大切になさっているからこそ、生徒は、安心して、授業の中での試行錯誤をやろうとするし、そのことが、実力を高め、テストにもつながっていると見えているので、「一生懸命」を保つことができるのですね。


【2分力】


2分という時間て、パワーがあるなあと思いました。

Talk to your partner!の区切りは、大体2分超です。

2分あれば、ずいぶん言葉を交わせるものなんだなあ。再認識です。

高校で多い、一方的に説明を続ける先生は、生徒同士で意見交換なんて、時間がとれないでしょう、なんて誤解していますが、たった2分で、ぐんと深められるという確信を持ちました。


【にこにこ、ぐるぐる、視線のシャワー】


以前にも増して、モニタリングを濃くされていますね。
そして、生徒を見守る笑顔も、より強さが増していました。
(うまい表現がみつかりません。すみません。)

class managementもより巧みになられていますね。
cautionもソフトなので、雰囲気が悪くなりません。

まさに、全身を使って、教室をcontrolしておられると思いました。

モニタリングで、「できている」と確認できた生徒に発表の機会を与え、承認を公にして自信を与えておられました。


1つ気づいたことは、生徒がライティングをしているときに、日本語で言葉がけをされました。

眼から鱗です。
ここで英語で言葉がけをすると、生徒の、英語の思考が妨害されます。

しかし、日本語は、脳をしっかり働かせなくてもキャッチできるので、英語の思考をとめないことがわかりました。

文科省の主張は、all Englishを目指せとのことですが、生徒の英語使用を高めることが目的だと言い続けている私は、ちょっとうれしいヒントを得ました。


【生徒の実感】


先生の授業を受けた後、生徒は、充実感と心地よい軽い疲労を覚えると思います。

「ああ、いっぱいおしゃべりしたなあ」
「T先生の好きなドリンクって、それだったんだ~。へええ。それより、○○とT先生は友達だったんだあ。」
「なるほど~。映画は泣けるけど、歌は泣けないか・・・。オトナの意見だなあ。」

活動の「形」よりも、活動を経てコンテンツが頭に残っている。
これは、楽しいことであり、こうでありたいですね。

難しい年頃に、クラスの誰とでも、先生とでも、分け隔てなく話すことができるなんて、なんて素敵なことでしょう。これこそ、教育の使命ですね。


私は、今年度はじめて担当する生徒ばかりですので、まだ、「定型」を定めるべく、手探りとチャレンジをしている状態です。


そのチャレンジこそが楽しいな、生徒のことを考えて工夫していこうと考えることが楽しいな、T先生の授業DVDを見て、あらためて、心洗われる思い、初心に立ち返る思いでした。


また、お会いできる日を楽しみにしています。本当にありがとうございました。