現在完了形のもつニュアンスをどう掴ませていくか②
普段,教科書の1セクションをどう進めているか,と言えば,
1時間目:新出言語材料を導入しつつ(1つ前の投稿参照)
コミュニケーション活動を行い,体感的に言語材料を学ぶ
2時間目:教科書の内容理解をしつつ,
1時間目に学んだ言語材料が,本文中でどのように使われているか
を理解する
ようにしています。
前回の投稿では,継続用法の話をしましたね。
今回は,完了用法のことで綴ってみます。
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教科書の内容理解にSLA的な要素を取り入れ,
①閉本させたまま,リスニングポイント(本文のメインポイント)を2つ示す
②聴きどころを絞って聴く(ペアで何が聴こえたか,をシェア)
③答え合わせをする
④まだ閉本したまま,ピクチャーカードを使ってOral Introductionする
⑤T-Fで内容理解度チェックをする
⑥開本して,音と文字を重ねながら聴く
と言う流れ・・・は以前も紹介したので,ここではその後,新出単語を導入したり,本文中の要点を板書してまとめたり,音読をしたり・・・の後に焦点を当てようと思います。
セクション1では,日本の学校のチャイムが,ロンドンのビッグベンの鐘のメロディになっていることや,60年ほど前に日本の中学校教師と,その友人の機械工がそのチャイムを初めて考案したことが触れられます。
ALTのHall先生が,ユキに,そのチャイムのことを調べてくれないか,と投げかけて終わります。
セクション2では,パソコン室での調べ物の様子が描かれています。出だし,次のようにHall先生が尋ねます。
Hall先生は,ユキに過去形で尋ねています。
それに対して,ユキは,現在完了形で答えています。
テストで言えば,発問の形式に答えの形式も合わせることになるので,ちぐはぐに見えます。
さらに,教科書準拠のモデルCDでは,Good.や,その後に出てくるReally?も下降調で淡々と述べているのに対し,ユキは,Look!と得意げに,先生にがんばりを伝えたいような声色で発話しています。
そこで,子どもたちに投げかけます。
Hall先生ってどんな先生だろう?
ユキはHall先生をどう思っているだろう?
近くの友人とわいわいやりながら,子どもたちは考えます。
やりとりを続けるうちに,生徒からは,
Hall先生は淡々とした先生だ,とか
ユキは先生を慕っている(好き)だけど,Hall先生はそうでもない・・・
なんていう意見が出てきます。
そこで,先ほど紹介した,先生は過去形で尋ねていて,ユキは現在完了形で答えている部分に着目させます。
どうしてこんなギャップが生まれているのだろう,
さっきみんなが言っていた,Hall先生と,ユキの関係性が見えてくるはずだよ,
と投げかけます。
今回も友人とやりとりをさせ,その後全体でシェアすると・・・
Hall先生は,チャイムについての情報が得られたかどうか,という事実だけしか尋ねていない(興味が薄いのでは?)
でも,ユキは時間をかけて調べたので,それを伝えたいと思っているから,現在完了形を使っている
なんていう意見が出てきます。
さらに,この場面って,授業の冒頭,中ごろ,終わりごろ,どのあたりだろうか,
と投げかけると,終わりごろだ,という意見がほとんどを占めました。
なぜ?
と問いかけると,現在完了形を使っている,ということは,時間をかけていることが見えてくるから,と答えていました。
こうして時間をかけて子どもたちとキャッチボールをしていくと,日本語にはない完了,という概念を,頭も使って掴んでいくことができると思います。
どうでしょうか。
セクション2の終わりに,Hall先生から,ユキは,次の時間,クラスメートに,チャイムについて説明するスピーチをするように依頼されます。
セクション3の出だしは,次のようになっています。
ここでは,さすがのHall先生も,現在完了形で尋ねています。
みんなに前のセクションの出だしと,この文の比較をさせると・・・
Hall先生が自分でユキに課題を与えたから,授業の後,ユキが放課後や,家で調べ物を続けたり,スピーチを書いたりして,準備をしていることを分かっているから,といった答えが出てきました。
よし!
ここまでくれば,完了の概念の大事な部分を掴みつつあることが分かりますね。
どうでしょう。
生徒の気づきを引き出すために,教科書の行間を読ませるような(知的好奇心を刺激するような)発問をしつつ,現在完了形のもつニュアンスを掴ませる実践でした。
よかったら感想を聞かせてくださいね!