言語習得,記憶の保持,学びのユニバーサルデザインの視点から
Kさんから
昨年度,大学院1年目にキャンパスで学んでいたとき,博士課程に進もうと,大学の教員を辞して,準備を進めていたKさんと出会いました。
指導教官のところに相談に来ていたKさんと,前期のゼミで学び合いました。
年齢はずっと下にも関わらず,帰国子女で英語を堪能に操るだけでなく,言語習得理論や,脳科学,記憶など,さまざまなことに通じている人でした。
現在は,首都圏の私立大学で再度教鞭をとりながら,次の一歩に向けての準備もされています。
その後もfacebookを中心に交流が続いていて,その縁で,自分の授業のDVDを視聴し,アドバイスをもらうことになりました。
Kさんから送られてきたコメント,実にA4にして5枚にもなるのですが,中学校現場で働く英語教師のコメントとはタッチが違うのです。
言語習得,記憶の保持,学びのユニバーサルデザイン(=学習者の視点で)など,拙い私の授業を客観的かつ,大事な視点から分析してくれているのです。
思わず,すごい! うれしい! と思ってしまうコメントばかり。
Kさんの気づき,として綴られているのは,単にお世辞で授業を誉めるのではなく,互いに高め合うためのsuggestionsをしっかりと伝えてくれるコメントでした。
Kさん,本当にありがとうございます。
いただいたコメントの中から,いくつか紹介したいと思います。
現場の同僚からは,こうしたコメント,なかなかもらう機会はないですね。
どうですか?
みなさんも,ぜひ参考にされてくださいね!
気づいた点:
ウォームアップ
■ここでのインタラクションでは、話している内容のまとめを英語でone wordでも黒板に板書すると,聞き取れなかった子もそこで情報の保管ができるのではないかと思いました。
これは脳の仕組みからも言われていることですが、一気に全部の情報を覚えることはできません。日本語では自然とキーワードだけ頭に残し(または写真のようなイメージを残し)全体像を把握し、コミュニケーションを取ります。
英語ではどうしても全部聴き、覚えようとするため、理解が浅くなり、情報処理が遅くなるので、「常に聴いた内容を要約する」この思考プロセスの手助けにもなるかと思います。この要約は、リスニング、ライティング、リーディング、スピーキング全ての技能に役立ちますし、要点を読みとったり、それらを伝えられるとミスコミュニケーションが減ります。(忘却線というものがあり、1時間経つと6割ぐらいの情報は忘れているという研究結果があります。そのため、情報をコンパクトにして覚えやすくする工夫が必要です)
■Twinという言葉を紹介する時の段取りや説明は参考になります。生徒の身近な環境に併せて説明されている点は、わかりやすく、生徒の記憶にも残りやすい要素が含まれていました。(身近なもの、既存の情報と絡めると脳が重要だと判断し、記憶に残りやすいと言われています。)後は、ボキャブラリーを習うときは、辞書など無しに、まずは個人で意味を考える、文脈を与えてそこから読みとる、この作業があるといいのではないでしょうか。
■Reproductionでは、しっかりと生徒が発言し、アウトプットができていたので、感心しました。生徒さんに発表者に向くように指導されていた点も、アイコンタクトではないですが、コミュニケーションの要素をうまく伝えていたと思います。プレゼンテーションの練習にもなりますし、読んだ内容の理解にもつながります。自分の言葉で要約して、伝えることは内容を理解できてないとできませんので、生徒さんがどこまで理解できたかのチェックにもなります。参考になりました。
JPOPのthink that~構文
■先生が例を出し、自分の意見を説明することはファシリテーターとしての役割を果たしていると思います。生徒さんは共感を持てますし、ロールモデルにもなります。個人の意見や体験を話すとそれだけ身近に感じるとの報告があがっています。(Role modelやBelief, Class Dynamicsなどの文献です)
■ここで二点気になりましたのは、先生の例が生徒にとっては少し長くて複雑だったのではないかということです。例は良く、しっかりしていましたが、模範にするには少々レベルが高いと思いました。もう一点は、ここでもキーワードや質問の答え方のコツです。
例えば、What do you think about Jpop? Give artist's name, title of songs, why you like or dislike, reasons.などを黒板に書くとはっきりするのではないでしょうか。答えるときに最低限必要な項目をリストすると明確になるかと思います。例えば、好きなものでは大雑把なので、好きな和食とか、好きな果物といったように少し枠を狭めてあげる工夫です。
■パートナーと話し、それを聞き取り、発表するという流れも4技能をうまくとらえていたと思います。ここで、もう一歩付け足して、メモを取るという行為も速記と要点を瞬時にまとめる訓練になるのではと思いました。また、この際に先生がクラスを回り、膝まづくいて目線を会わせながら会話に参加する姿勢は参考になりました。これも親近感をいだく要素だと思います。ファシリテーター。レストランや銀行、携帯会社のサービス業でもそのように目線を併せて話すということをします。