離れても学び合える 大分のYさんとともに・修士論文を通して

f:id:takaenglishteacher:20140127175331j:plain Yさんとともに

 

 

お世話になった方々に,修士論文のpdfを送らせていただいています。

 

稚拙な内容であっても,お礼代わりに・・・という思いを込めて。

 

大分のYさんとは,これまた一度も会ったことがないのにもかかわらず,意気投合しつつ,remoteで学び合いをさせてもらっています。

 

facebookでも,ブログでも,です。

 

Yさんは,私と同じように,現場で働きながらも,私の拙い英文を読んでくれている・・・ そうしたこと自体が感激なのですが,深い,深い質問をしてくれました。

 

鋭いなあ・・・

 

Yさん自身も,昨年度1年間,現場を離れ,地元の大学の研究機関のスタッフとして研究をされていた方です。

 

むしろ,私が学ばせてもらっているのです。

 

学びが深まった喜びで,その様子を少し載せてみます(YさんもOK!でしたので)。

 

何かの参考になるといいです!

 

 

 

 

 

Yさん

 

 忙しい中貴重な時間を割いてくれて,本当にありがとうございます。

 先生の誠意を感じ,嬉しく思っています。心から感謝しています。以下,十分な回答にならないかもしれませんが,飾らず,率直に書いてみます。

 

active participation and interactionについてなのですが,論文中の’students respond teachers’ follow-ups, participate in interactions actively and voluntarily, and get eager to keep interacting’という説明がありますが,具体的にはどのような要素を持って定義しているのでしょうか。

 

A:授業観察の中から生データとして抽出できたものを,帰納法的にまとめています。最初から・・・になったらOK,という状態にはしていません。

 箇条書き的に書き出すと

 ・対話のターン数が1ターンではなく,複数になって継続している

 ・指名されて発話している生徒以外の生徒が,自発的に(つぶやきなど)対話に参加してくる

 ・話題となっていることが広がって聞き手の生徒たちも含めてシェアされる=聞き手の聞き方(傾聴),柔らかな体

 ・話題となっていることがシェアされ,発話する生徒が移っていく中で発展し,広がっている

 ・笑いを共有している

 

 ようなことです。

 

 できれば,一歩進んで,スクリプト右に分類しているような8要素を用いて,どの要素を使っているときに・・・と検討できればよかったのですが,そこまでの余力と,物理的な余裕がありませんでした。そうしたことが検討できると,言語習得にも影響があることが言及できるかもしれない・・・と思いました。

 

 

またその状態へ生徒を意識づけていく指導は「動機付け」を高めることと同じであるように思いました。もし動機付けと同じように定義付けできるのであれば,指導として必要なことはfollow up move以外にもあり得るように思えたのです。さらには質的・量的の両側面から分析が可能になるとも思いました。(私は田中先生(広島国際大学)の動機付けについてのJALT論文を読んだのですが,先生がactive participationと生徒を位置づけている状態が「授業活動に対する動機付け」を高めることと非常に似ていると感じました。)・・・が,いかがでしょうか。

 

A:その通りだと思います。前ページの箇条書きのポイントの中の後半部分は,動機付けに特に関わってくるものだと思います。感じているのは,やる気を起こさせるには,

 

 ・教師と生徒の相互作用が必要である

 

 しかし,英語の授業なので,そこに英語を乗せていかなければ意味がかなり薄れるため,英語を使ってインタラクションが有効になる。しかし,formだけに焦点化したものでは,対話は継続せず,学校の外でも使えるものにはなっていかない。では,どうすればよいのか,という鍵が,

 

 ・follow-up(D)

 

になる,ということです。

 

 また,F(D)に続けて,先生が次のInitiation(追加発問)をすることもポイントです。対話が継続する必然性や必要感が増します。

 

②①にも非常に近い質問になるのですが,follow up moveについてです。生徒がactive participationの状態になったのは,授業における他の要素は関係していないのでしょうか。最初の状態と指導した後の状態との違いから測定したものなのかについて生徒の分析(変化)についてはいかがだったのかを是非お聞きしたいと感じました。さらにその他の指導における影響があることも考えられるのではないのかとも感じました。

 

A:その他の要素については,具体的に検証をしていません。量的な研究の側面から言えば,根拠の薄いものに映ってしまうことでしょう。しかし,撮影した日もこちらが指定したものではなく,午前の授業か,午後の授業か,欠席者がいるかいないか,席替えをした直後か否か,教科担任ではなく担任に叱られた直後か否か,個人的な悩みを抱えている生徒がいるかいないか,テスト前かそうではないか,・・・挙げたら環境要因はきりがありません。

 

 だからこそ,practitionerの立場から,follow-upに焦点を当てて考えてみた,それ以外の要素については不確定すぎて,具体的には触れていない,というのが実態です。

 

 甘い研究か,と言われるとその通りだと思いますが,そもそも,教室の生の実態が,分からないことばかりだと思いますが,どうでしょうか。理論で整理できないことの方が多いと思うのです。

 

 今回の研究の主目的の一つが授業改善への示唆なので,今回のようなタッチでの論文も,現場の先生になら生きると信じています。

 

 

③実践的な側面から・・・自分の生徒は(自分の指導が未熟なため)まだまだ上手く英語を駆使しながらインタラクションをすることができません。インタラクションが出来る生徒と出来ない生徒にはどのような違いがあるとT先生はお考えでしょうか。

 

A:できない生徒は,

 ・インプットされる英語が理解できていないので,反応できない

 ・インプットされる英語は理解できるが,アウトプットする英語が未熟である

 ・インプットされる英語は理解できるが,その内容について意見が持てない

 

 ような状況でしょうか。

 

 私がずっと行っているのは,

 

 ・Visual Aidsの活用

 ・Topic Selectionの工夫(生徒の中に情報があるもの)

 ・アウトプットさせる前に,周囲と相談したり,雑談したりできる間や雰囲気を作っておくこと

 ・指名の工夫(できる生徒に最初に解答してもらい,その解答をモデルにさせる)

 

 です。

 

 インプット大 > アウトプット適量(小)

 

 ということを考えると,インタラクションで先生がインプットし,なげかけたこと(initiation)について,生徒がしっかりと文レベルで反応しなければいけない,と考えてしまうと,先生も生徒も非常に苦しくなります。最初は頷いたり,返事をしたり,でよいのではないでしょうか。

 

 特に低学年の段階では,最初は返事や反応が日本語でもいいのではないでしょうか。小学校との関連もありますし,内容が理解できているから反応ができるのですから。そこに,先生が英語をかぶせてあげればよいのだと思います。

 

 また,先生自身が生徒と共に対話を楽しむことが大切なのではないでしょうか。笑いを共有し,エラーを許容できるようになっていると,意見を出すことに躊躇する生徒が減っていくと思います。