【埼玉のNさんへのお礼】 献本:「中学英語 いつ卒業? -中学生の主語把握プロセス」を読んで
先週末,これまでも研修を一緒にしてきたり,授業DVDを送り合って学び合ったりしてきた埼玉のNさんから連絡がありました。
東京学芸大学の名誉教授・金谷先生と一緒に編んだ本を送りたい,との申し出です。
えー!! 自分に??
嬉しい悲鳴でした。
申し出から数日後,出勤すると早速Nさんからの献本が届いていました。
Nさん,ありがとう!
感謝の気持ちで読み始めました。
夏休み残り2日の今日の午後読了
まえがきに始まって,本書へのガイドを読み,大まかな流れを確認した後で,パートⅢの教育への提言とあとがきへと進んで読んでみました。
これまで読んできた金谷先生の本同様,現場での指導との関連が強く感じられる内容で,思わず気持ちが熱くなりました。
言語習得がどう進んでいるのか,研究の成果をまとめた本は数多くあります。
一方で,日本の教室発,私たちが毎日を送っている現場に根差したものはなかなかありません。
Teacher-researcherになりたいとは思うものの,多くの教師は実践者であり,発表される研究の成果を待っていることが多いのではないでしょうか。
大学,特に教育学部の先生方には,今回の金谷先生のように,現場発の実証研究をたくさん推進していただいて,そこで見出されたことを私たちに教えていただきたい・・・そう強く願うばかりです。
(偉そうにごめんなさい)
そのことで,現場の教師が得られるメリットは小さくないと思います。また,そのことをきっかけにして,自分から研究の分野に・・・と考える教師も生まれてくるのではないかと思います。
金谷先生のもとで学んだNさんが,正直うらやましくもあります。
(ないものねだりをしても仕方がないですね!)
*
本書で何度も繰り返されていますが,習得はすぐに起こるわけではありません。
これまで拙ブログでも綴ってきたように,英語学習は体育や音楽に近く,習得はすぐに起こるものではなく,Try and errorを何度も何度も重ねていくうちに進んでいくものだ,というところにまずは強く共感できました。
その上で,私たち教師が意識改革をする必要があるとしています。
●教えたから理解している,身に付いたと考えることから脱却する
●中学校で教えたことは,中学校で完全に習得されることはなく,高校以降で繰り返し触れ,使い,理解を深化していく中で達成されると考え,生徒の学びを支えるバトンを受け渡す
(小学校→中学校→高校の先生へ)
●生徒の学習(学び)のプロセスを大事にした授業を構想・実践する
●どう教えるか(導入)の指導計画から,どう学んだか(履歴)の指導計画へと質的転換を図る
最初と最後を読んだだけでも,大きな刺激がありました。
そして,中身です。
語順指導に端を発し,そこから追究するポイントを名詞句に絞り・・・,というミクロな視点に焦点化し,それが子どもたちの中でどう学ばれていくのか,10年に渡ってリニューアルしながら追いかけ続けた地道な研究の様子が分かります。
第1次から第3次まで,それぞれに同じ生徒を中1から中3まで追いかけていく流れを3回繰り返しています。
思考錯誤の生々しい様子がエピソードとともに伝わってきます。
現場の私たちにとっても,とても理解しやすく,日々の指導を見直すきっかけとなる本です。
ぜひ手にとってみてください。
読者へのメッセージとして,本書の提案する研究の流れに乗って,添付されているテストを実施してみよう,という投げかけがあります。
身近に金谷先生のような方がおられる場合はよいのですが,そうではない場合,では!と気軽にスタートしてみるまでにはハードルがあるなあ・・・と率直に感じました。
現場と,大学の先生がより密接に関わり合えるような,そんな環境が各地にできるといいなあ・・・と思います。
Nさん,素敵な本をありがとうございました。
この場を借りて心からお礼申し上げます!